アカデミー賞の作品賞受賞作として、オスカーの歴史に名を残す作品。どの部門も大切であることには変わらないが、それでもやはりこの「作品賞」は特別だと言える。そんな今年の10本は下記の通り。
『西部戦線異状なし』(9部門ノミネート)
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(4部門ノミネート)
『イニシェリン島の精霊』(8部門9ノミネート)
『エルヴィス』(8部門ノミネート)
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(10部門11ノミネート)
『フェイブルマンズ』(7部門ノミネート)
『TAR ター』(6部門ノミネート)
『トップガン マーヴェリック』(6部門ノミネート)
『逆転のトライアングル』(3部門ノミネート)
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(2部門ノミネート)
10以上のノミネートを獲得したのは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のみ。また同作と『イニシェリン島の精霊』は演技部門に4人の候補を送り込んでいる。外国語映画からは『西部戦線異状なし』が候補入りとなっている。
続いてここ最近の作品賞受賞作品を振り返る。下記の5本だ。
第94回 『コーダ あいのうた』
第93回 『ノマドランド』
第92回 『パラサイト 半地下の家族』
第91回 『グリーンブック』
第90回 『シェイプ・オブ・ウォーター』
作品のジャンルとしては様々だ。『パラサイト』や『シェイプ・オブ・ウォーター』は受賞作品の中でも割と珍しいタイプの作品ではあるが、直近2年間はやはりアカデミー賞らしい作品が受賞しているのではないか。
特徴としては直近5年間は『パラサイト』を除き、アメリカ製作者組合賞の受賞作品が作品賞に輝いている。これか対象を過去10年間にしても、そのうち7回は同組合賞の勝者がオスカーを受賞している。
そう考えるとやはり『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の受賞を予想するのがまずは妥当だろう。今年一番人気のこの映画は、マルチバースとカンフーを題材にしたエンタメ作品だが、映画ファンにも批評家にも愛され、賞レースを快走。ロサンゼルス、サテライト賞、ラスヴェガスを制し、ブロードキャスト映画批評家協会賞と組合賞を制した。さらには映画俳優組合賞のアンサンブル賞も受賞。演技部門にも4人の候補を送り込み、脚本賞と編集賞と言った重要部門にももちろんノミネート。今最も勢いのあるA24が作った、今最も勢いのある映画と言えるだろう。
懸念があるとすればやはりその作風か。あまりにも独創的すぎる作風がどう影響するかは確かに気になるところ。でもまぁ95年の歴史のある賞が、こういう作品を選ぶというのは大きな意義があるとも感じるし、やはりこの部門のフロントランナーの地位は揺るがないだろう。
その次に受賞の可能性が有りそうなのは『イニシェリン島の精霊』と『フェイブルマンズ』だ。特に前者は賞レースではエブエブと同じぐらいの勢いがあった。ただ、批評家賞の勝利は比較的地方の都市のものが多かったし、ゴールデン・グローブ賞を受賞したものの、現在はかなりエブエブに差を付けられた感じはする。後者は名匠スピルバーグの自伝的映画で、こちらもゴールデン・グローブ賞を受賞したが、ピークはその日だった。それ以降の盛り上がりは緩やかだ。
『西部戦線異状なし』や『エルヴィス』、そして『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は技術賞・美術賞がメインとなるだろう。ただ、この中で『西部戦線異状なし』だけは、可能性は小さいが、作品賞受賞の可能性を秘めている。何と言っても第3回受賞作のリメイクだし、英国アカデミー賞を受賞したことからも作品人気はかなり高い。昨今の情勢も考えると、票が集まる可能性はあるように思う。
『TAR ター』、『逆転のトライアングル』、『ウーマン・トーキング』に関してはさすがにノーチャンスか。それぞれ支持は作品というよりも特敵の個人に集まりやすい作品だ。
最後に『トップガン マーヴェリック』だが、私は受賞の可能性は実は小さくないと思っている。やはり映画館に人を戻したという意味では、この作品の存在意義は非常に大きいし、作品人気も相当に高いはずだ。何より圧倒的に作品人気の高いエブエブを破ってなお、受賞することに説得力のある作品は、この作品しか無いだろう。もちろんエブエブが最有力であることは間違いないが、嬉しい意味でのビッグサプライズを起こせるのはこの作品な気がする。
2022年を代表する映画に、一体どの映画が選ばれるのか。封筒が開けられるその瞬間が非常に楽しみだ。
受賞予想→『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
個人的希望→『トップガン マーヴェリック』
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