助演女優賞とは正反対に、今年最も予想が簡単なのはこの部門だろう。まずは今年候補入りした5人をご紹介。下記の通りだ。
ブレンダン・グリーソン 『イニシェリン島の精霊』(初ノミネート)
ジャド・ハーシュ 『フェイブルマンズ』(42年ぶり2回目)
キー・ホイ・クァン 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(初ノミネート)
ブライアン・タイリー・ヘイリー 『その道の向こう』(初ノミネート)
バリー・コーガン 『イニシェリン島の精霊』(初ノミネート)
ジャド・ハーシュが実に42年ぶりの候補入りを果たしたが、それ以外は全員初ノミネート。そしてこちらの部門は『イニシェリン島の精霊』が2人の俳優を候補に送り出している。
比較的に映画界で長年活躍しているベテランが有利な傾向にあると言われているこの部門、直近5年間の受賞者は下記の通り。
第94回 トロイ・コッツァー 『コーダ あいのうた』
第93回 ダニエル・カルーヤ 『ユダ&ブラック』
第92回 ブラッド・ピット 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
第91回 マハーシャラ・アリ 『グリーンブック』
第90回 サム・ロックウェル 『スリービルボード』
いずれも映画界で長く活躍してきた俳優たちで、比較的若い年齢で受賞しているのはダニエル・カルーヤのみだ。そんな今年の助演男優賞だが、既に勝負は決まっているようなものだ。なぜならキー・ホイ・クァンの受賞以外は、ほぼあり得ない状況となっているからだ。
かつては『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』や『グーニーズ』で子役として活躍したものの、21世紀に入ってからは映画出演は遠ざかってた。そして最近映画出演を再開したのだが、その2作目が『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で、ミシェル・ヨーの夫を演じて大激賞を集めている。前哨戦はこち論ぶっちぎりの独走で、ゴールデン・グローブ賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞、そしてアメリカ映画俳優組合賞の全てを受賞した。しかも対象作は今年最も人気の作品だ。オスカーは俳優のカムバックも大好き。もはや彼を追い抜ける人はいないだろう。
ブレンダン・グリーソンとバリー・コーガンの『イニシェリン島の精霊』組もまた、非常に素晴らしい演技を見せており、特にグリーソンはこれまでの功績からしても、受賞しても全く不思議はない。実際、クァンの次に前哨戦で結果を残したのは彼だ。しかし、今回はさすがに分が悪い。そして英国アカデミー賞をコーガンが制したように、両者ともに評価が高いのだ。そうなれば必然的に票割れをしてしまうだろう。
この部門唯一のノミネート経験者であるジャド・ハーシュと、最後のイスを勝ち取ったブライアン・タイリー・ヘイリーはノーチャンスだ。前者は『フェイブルマンズ』の勢いはゴールデン・グローブ賞を受賞してからなぜか衰えてしまったのが痛いし、後者はエディ・レッドメインやベン・ウィショーら、他のライバルとギリギリの争いだったことを考えると、厳しいだろう。
無敵の候補者が最初から最後まで独走したこの部門のレース。ゴールテープを切る瞬間は目の前だ。
受賞予想:キー・ホイ・クァン 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
個人的希望:ブレンダン・グリーソン 『イニシェリン島の精霊』
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
(C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.