今年のサンダンス映画祭で4冠を達成した注目作品が本作だ。ちなみに聴覚障害の一家に生まれた少女の青春と家族との絆を描いた感動作品。Apple TV+が多額の金額を投じ配給権を獲得したことでも、本作は非常に注目されている。ちなみにCODAとは「Child of Deaf Adults」の略で、文字通り聴覚障害の子供と言う意味だ。
漁業で生計を立てている聴覚障害の家族で、ただ一人聴覚障害を持たずに育った少女ルビー。彼女は何よりも歌うことが好きで大学への進学を考えていたが、家業が上手くいかずにいた。ルビーは自分の夢と、家族の中でのけ者にされるのではと言う不安との間で葛藤する。
サンダンス映画祭はアカデミー賞を占う上で最も重要な映画祭の一つ。ここで高評価を得た作品は毎年のようにアカデミー賞に候補入りしている。『ミナリ』や『レディ・バード』がその代表例だ。そしておそらく今年に関してはこの映画が「サンダンス枠」になるだろう。作品評価は疑いようもなく、賞レースでの健闘が期待されている。
その賞レースだが作品賞を中心に演技部門は女優陣が中心になるだろう。本作の主演を務めたエミリア・ジョーンズはまだ19歳。ここまで大きく注目されたことはないが、実は彼女は『パイレーツ・オブ・カリビアン』の4作目に出演しているなど、年齢の割に意外と経歴は長い。2011年からコンスタントに映画やドラマに出演を続けていたが、この映画でいよいよブレイク。若い女優は中々候補入りまでたどり着けないことも多いが、大いに期待できる。各批評家賞のブレイクスルー賞には多く名を連ねるだろう。
この映画で最も候補入りの可能性が高いと言われているのは聴覚障害を持つ母親を演じたマーリー・マトリンだ。知っての通り彼女自身も聴覚障害者。初主演だった『愛は静けさの中に』でアカデミー賞主演女優賞を手にした彼女。役柄が限られてくるため、あまり映画出演は多くは無いが、久々にオスカーに帰ってくるか注目だ。ちなみに彼女はアカデミー賞主演女優賞の最年少受賞者。この映画でエミリア・ジョーンズが更新したら素敵だ。
インディペンデント映画のため監督賞は相当批評家賞で愛されないとキツい。シアン・ヘイダーはこれが長編映画2作目。近年は女性監督の活躍は著しいが、巨匠の映画が数多く公開される今年、どこまで食い込めるか注目だ。ただ、作品に強力なパワーがあるので、候補入りの可能性は十分にあるし、脚色賞も十分にあり得るだろう。
技術や美術の映画ではないので、それ以外で候補入りがあるとしたら編集賞ぐらいか。作品評価は極めて高いが、どこまで賞レースで勝てるか、注目だ。そんなわけで有力部門は下記の通り。
作品賞
監督賞(シアン・ヘイダー)
主演女優賞(エミリア・ジョーンズ)
助演女優賞(マーリー・マトリン)
脚色賞
編集賞