例年であれば、華やかで豪華なパフォーマンスで幕を開け、大きな拍手や歓声の中で進められるアカデミー賞授賞式だが、今年はさすがにそういうわけにはいかず。
3000人以上が入るドルビーシアターだが、今年は300人程度の人数で授賞式を行った。
今年は例年以上に「多様性」というキーワードが強く反映された受賞結果だったように思う。まぁ何でもかんでも「多様性」という言葉を押し付けるのは、個人的にはあまり好きではないが、それを掲げること自体は悪いことではない。
受賞結果は概ね順当なものであったが、最後の最後でまさかのビッグサプライズが待っていた。その辺も含めて第93回アカデミー賞授賞式を振り返っていきたい。
★最多受賞は『ノマドランド』の3部門受賞
そんなわけで受賞結果を振り返っていくと最多受賞は『ノマドランド』の3部門。作品賞、監督賞、主演女優賞を受賞した。下馬評では脚色賞と撮影賞も有力視されていたが、終わってみれば3部門の受賞に留まった。
いずれも主要部門での受賞となった本作だが、クロエ・ジャオはアジア人女性監督としては初めての受賞だ。昨年受賞した韓国人監督ポン・ジュノからクロエ・ジャオにオスカーが渡る。まさかアカデミー賞授賞式で韓国と中国の映画監督がプレゼンターと、受賞者と言う立場になるとは。これは素晴らしいことだ。
両国ともやはり、映画産業に関して言えば世界に向けて映画を発信しているし、人材も世界で活躍している。さぁ、日本よ。どうする?
フランシス・マクドーマンドはこれが3度目の主演女優賞受賞。これはメリル・ストリープやイングリッド・バーグマンなど名だたる女優を抜き、歴代2位の記録だ。ちなみに1位は4回受賞のキャサリン・ヘプバーンだ。
前回受賞時に彼女が叫んだ「Inclusion Rider」の言葉が映画業界の共通認識となり、それを象徴する『ノマドランド』と言う作品でオスカーに輝く。見事な結果だ。
★作品賞ノミネート8作品中7作品がオスカーを受賞
今回作品賞に候補入りした作品は8本あったが、そのうち『シカゴ7裁判』を除く7作品が何かしらの部門でオスカーを受賞したという結果になった。
『ノマドランド』3部門:作品賞、監督賞、主演女優賞
『Mank マンク』2部門:撮影賞、美術賞
『ファーザー』2部門:主演男優賞、脚色賞
『サウンド・オブ・メタル』2部門:編集賞、録音賞
『Judas and the Black Messiah』:助演男優賞、歌曲賞
『ミナリ』1部門:助演女優賞
『プロミシング・ヤング・ウーマン』1部門:脚本賞
『Judas and the Black Messiah』でオスカーを受賞したダニエル・カルーヤはもちろんこれが初受賞。ブラックパンサー党の指導者フレッド・ハンプトンを演じての受賞となった。なお、実在の人物を演じて受賞したのは今回は彼のみ。『ブラックパンサー』の監督、ライアン・クーグラーが製作に入ったこの映画で受賞した。
助演女優賞を受賞したのは『ミナリ』のユン・ヨジョン。韓国人女優としてはもちろん初受賞だ。アジア人女優としてもナンシー梅木以来だ。受賞スピーチではプレゼンターを務めたブラッド・ピットに会いたがっていたが、お写真の通り、会うことが出来たようだ。
その②に続く