助演女優賞は他の部門に比べて国籍や年齢の間口が広いのが特徴だ。アンナ・パキンのような少女が受賞することがあれば、ルピタ・ニョンゴのように無名のケニア人女優が受賞することもある。かと思えばアン・ハサウェイのようなスター俳優がオスカーを手にすることもある。
そんな助演女優賞の5つのイスを今年も多くの候補が争っている。皆優れた演技を披露しているが、ノミネートのイスは5つしかない。
ノミネート5人を予想するにあたってまず大切なのはオスカー前哨戦でも特に重要と言われている組合賞、ゴールデン・グローブ賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞のノミネート結果だ。
今回、その3つの賞すべてに名乗りを上げたのはオリヴィア・コールマン『ファーザー』とグレン・クローズ『ヒルビリー・エレジー』、マリア・バカローヴァ『続・ボラット』の3人だ。
※マリア・バカローヴァはゴールデン・グローブ賞では主演女優賞扱い
この3人は恐らく候補入りは堅いだろう。クローズの『ヒルビリー・エレジー』は作品評価では酷評されてはいるが、それであっても彼女やエイミー・アダムスを支持する声は大きい。未だにオスカー受賞経験が無いというのもクローズには強い味方になるはずだ。
これで残るイスは2つになる。順当に考えればユン・ヨジュン『ミナリ』が来るだろう。ゴールデン・グローブ賞は漏れてしまったが、それは『ミナリ』は作品賞資格が与えられなかったため。むしろ作品評価も抜群で批評家賞レースで勝利を山のように築いている彼女もまた、候補入りは堅いだろう。ただし、彼女も去年のソン・ガンホのようにスルーされる可能性もあるだろう。
問題は最後の1枠である。候補はたくさんいるが、アマンダ・セイフライド『Mank マンク』、ヘレナ・ツェンゲル『この茫漠たる大地で』、エレン・バースティン『私というパズル』、ジョディ・フォスター『The Mauritanian』の4人が最も有力だろう。
ただし、エレン・バースティンは若干勢いがなくなってきた印象だ。それは主演女優賞を争うヴァネッサ・カービーにも言えることだ。
作品評価も加味して考えれば最有力はアマンダ・セイフライドだ。ハリウッドで長らく活躍してきた美女だが、オスカー候補入り経験は一度もない。かつてハリウッドで活躍した女優マリオン・デイヴィスを演じたという役どころ、そして作品は『市民ケーン』製作の裏側を描いている。アカデミー会員が最も好きそうなタイプではある。しかし、彼女は最も大切な組合賞で、指名を受けられなかった。
その組合賞で指名を受けたのはヘレナ・ツェンゲルだ。この部門は度々彼女のような新人の子役がノミネートすることがある。それに対象作品は、主要な部門でノミネートを受ける可能性があるのはこの部門のみと言っていい。つまり作品の支持票が彼女に集中する可能性が有る。
ゴールデン・グローブ賞を受賞して大きなサプライズを巻き起こしたのがジョディ・フォスターだ。前哨戦でも全く目立たず、ノーマークだった彼女がここに来て一気に勢いを加速させている。オスカーには第67回に『ネル』で主演女優賞に候補入りして以来遠ざかっている彼女。助演女優賞での候補入りが実現すれば第49回以来、実に44年ぶりだ。
長らく書いてきたが、この部門のノミネート予想はこちら。
オリヴィア・コールマン 『ファーザー』
グレン・クローズ 『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』
マリア・バカローヴァ 『続・ボラット』
ユン・ヨジュン 『ミナリ』
アマンダ・セイフライド 『Mank マンク』